あるプロ棋士の少年時代。


竜君が私「アマ四段」の将棋クラブに来たのは、2年の夏休みの「小中生将棋大会でした。その時は1勝2敗で予選敗退でした。次に竜君が来たのは3ケ月後の10月28日でした。おとなしい性格の竜君は、お母さんに連れられて背中をを押されるように道場に入ってきました。その時は駒を動かせる程度の超初心者でした。4級の小学生に6枚落ちで良い勝負でした。当時道場の一番下は七級でしたが、竜君は14級として勝敗に関係なく、様子を見ることにしました。これは段々棋力が上がれば励みになると考えたからです。
帰り際に「今日は級が上がったよ」とお母さんに話している声が何度か聞きました。それからは土曜日毎に来るようになりました。
但ししぱらの期間は、1時間か1時間半でした。これは両親が買い物をしている時間でした。しかしこの僅かな時間の割に竜君が強くなるのは早かった。瞬く間に四段連中が「もう六枚落ちでは無理だよ」と根を上げるようになりました。道場に来てから3ケ月後に6級になりました。ただ6級と言っても、同じ6級の人と比べると、恐ろしく筋が良く、早見えでこの時この子は、将来強くなると確信しました。3年生の5月には4級に上がりましたが、この頃、竜君のことで感心した事がありました。それは前週のテレビ将棋の棋譜がすっかり頭に入っていて、盤を使わずに説明してくれました。
「今ならNHK戦の棋譜を1週間後に並べられる事。いまこれができない子はプロになるのは難しい。頭の良しあしでなく、将棋の才能のあるなし。ただし出来なくてもアマなら三段・1900点・ぐらいにはなれる。」
竜君は勝って負けても淡々としていました。昇級に影響する一番に負けた時に、「惜しかったね」と声を掛けると「いいんです、また勝てばいいのですから」とさらりと言ってきました。目先の勝敗にとらわれないスケールが大きく、どんどん強くなり、始めてから13ケ月で初段「1500点くらい」になりました。竜君はどんな強い相手と対戦させても、不平不満は言わず、負け惜しみも言った事はありません。そんな性格の素直さが、大人、子供に関係なく誰からも好かれていました。
竜君が初段の時に7連勝して、あと1勝て゜昇段という場面がありました。適当な相手いず、四段と角落ちでの対戦としました。勝負は厳しいもので、どう転んでも勝ち目のない局面になりました。指せば負ける。それまで早指しだった竜君が指さなくなりました。自分の手番にも関わらず、よそ見したりして全く指しません。日頃から竜君から見ると、それは珍しい出来事でした。迎えに来ていたお母さんが「竜・早く指しなさい、先に帰っちやうよ」と促したのですが、一向に指す気配がありません。対局相手の四段の方は穏やかな人でしたが、少し困った様子でした。しばらくして投了し、とちんに立ち上がりつて、涙が溢れんばかりの表情で、相手の四段をにらみつけました。これは竜君らしくもあり、竜君らしくもない出来事でした。後にも先にも、道場で泣き顔を見せたのは、この一度だけでした。4年生の7月に三段、9月に四段となり、お母さんに奨励会入りを打診したのですが、・・・棋楽
2016-10-01(Sat)
 

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